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本:ダニエル・カーネマン心理と経済を語る

ダニエル・カーネマン心理と経済を語る行動経済学の創始者の一人と言われるダニエル・カーネマン、彼のノーベル賞受賞記念講演と、その時の発表された自伝、そして彼の論文の2本(一般読者にも分かりやすいものらしい)をまとめたのが本書。ヒューリスティックとバイアスの話などは例えが秀逸で面白かったです。

第一章ではノーベル賞受賞記念講演として、ヒューリスティックとバイアスについてと、プロスペクト理論についてを解説しています。直感による判断(ヒューリスティック)は、すばやく高度な判断をすることができる反面、誤ることもある。直感という知覚がどのように表象されているのかを考えることで、直感が誤る場合(バイアス)を知ることができる、という話。プロスペクト理論では、現在の「状態」ではなく「変化」を重視する知覚の特徴に注目し、富が上下に変動するリスクがあった場合、人は損失を回避する傾向があることを示しています。

第二章はカーネマンの自伝。イスラエル生まれでフランス育ちのカーネマンは、ドイツによるフランス占領という苦境を経験しつつ、15歳の頃にイスラエルに移住します。その後ヘブライ大学で心理学の勉強しつつ、軍隊で心理学を利用した職務に従事(イスラエルは当時まだ若い国家であったため、学生であったカーネマンでもプロの心理学者として活躍することができたみたいです)。その後エイモス・トヴェルスキーと出会い、共同研究をしていくことになります。トヴェルスキーはカーネマンにとって最重要人物で、本書を通じて端々に登場します。

第三章は「効用とは何か?」について。カーネマンは現在の経済学で一般的に使用されている、選択肢から推定される「決定効用」ではなく、経験にひもづく効用「経験効用」の概念を支持しています。

第四章は、選好を推測する方法としての「満足(well-being)」の測定について。時間の感覚などによるバイアスなどに触れつつ、「U指数」を採用することのメリットなどについて説明しています。