4,5ヶ月前に読んだ本なので、読み返しながら作文。幽霊の存在を科学的アプローチで立証しようと試みた科学者たちの物語です。科学系のノンフィクションは好きです。
本書は12章構成で、時系列にそって話がすすみます。前半は物語の背景、心霊研究の成り立ちについてが主で、後半はハイパー婦人という信頼のおける霊媒と、エウサピアという一筋縄ではいかない霊媒という、二人の霊媒の研究が主になります。話の端々で触れられる科学者たちの人間味、時代の熱気のようなものが、物語に躍動感のある色をつけてくれます。
本書の面白いところは、ただ心霊現象をうのみにするわけではなく、つねにトリックの疑いをもって、いんちきをあばこうという姿勢がある点。その代表格がホジソンという人物で、本書中でもいくつかの心霊トリックをあばいている。そのホジソンが「トリックがない」と見込んだのがハイパー婦人で、懐疑主義である彼がついに霊の存在を認めるようになる(p290)。執拗なまでにいんちきをあばこうとするホジソンがついに認めた!というところに、まるで一緒に研究に携わっていたような高揚感を持ちました。ハイパー婦人はいわゆる霊媒体質で、幽霊(と思われるもの)を体にとりこみ本人とその幽霊となっている人物にしか知り得ない情報を指摘したりする。
あと、もう一つ面白かったのは、心霊能力には「衰退効果」があるのではないかという仮説です(p193)。年をとるにつれ、心霊能力は弱まっていく場合があるのではという話。心霊能力はうまれつきのもので、不変の能力と思いがちだったので、そういう考え方もあるのとはっとさせられました。
科学の研究に携わっていない私は、科学とは絶対的なもので、絶対不変の理論であると考えてしまいがちですが、科学とは仮説と立証のたゆみない繰り返しであって、まだ理解できていない現象も存在する、そう思わせるような内容でした。