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本:若者と社会変容 リスク社会を生きる

現代社会の著しい変容が若者に与えている影響について論述した本。本書では、現代社会の生活と人生は「認識論的誤謬」が根底にあると述べています。現代は新しい時代の登場であり、いままでの集団や階級などの社会的な構造が人生に大きな影響力を持たなくなりつつあり、個人が中心の社会となってきていると言えるのか。本書では社会構造が人生の機会に与える影響力は変わらず存在しているとしています。

選択肢の多様化などが表面的には個人の選択の自由、平等化をもたらしているようにみえるが、実際には親の収入などによって階層化しており、階層によって選べる選択肢(機会)には制限がある。しかし、表面的な平等化が、自分の人生を決めるのは自分である、選択するのは自分であるとし、人生を決める責任・リスクは個人にあるという認識を生んでいる。その主観的な認識と客観的に存在する階層構造(不平等)が、認識論的誤謬となっている。本書ではこうした論を教育から労働市場への参入、余暇、健康への影響、犯罪への関与、政治への参加などの視点から詳述しています。

(本書は全体で275ページほどで、文章量としては普通ですが内容にとにかく厚みがあります。より詳細の解説については本書の訳者解説を参考にされるのがよろしいと思います)

言い換えれば、弧度近代の人生生活においては、認識論的誤謬がくりかえされている。この認識論的誤謬の内側で、長期的な歴史的プロセスの一部をなす、集団性から次第に隔絶されていく感覚が、リスクと不安という主観的認識と強く結びついて存在する。個々人は、日々の生活のあらゆる場面でぶつかる一連のリスクを乗り越えていくことを強いられる。しかしながら、個人主義の強まりによって、危機は個人のコントロールを超えて起こるプロセスの結果としてよりも、個人の欠陥として認識される状況が生まれる。(p275)