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本:世界の多様性 家族構造と近代性

エマニュエル・ドットが1983年に著した「第三世界」と1984年に著した「世界の幼少期」を二つ合わせたのがこの本。「第三世界」では「世界にある多様なイデオロギーの基底にあるのは家族構造」と論じ、家族構造とイデオロギーは対になっていると主張しています。「世界の幼少期」では教育における女性の権威の重要性を述べ、女性の権威を受け入れる家族構造は文化的成長が速いと論じています(ただし文化的成長は地理的な伝播の影響を受けるので、それも考慮する必要がある)。

論の中心である家族構造については、「両親と子供の関係」「兄弟間の関係」「近親相姦の禁止」という3つの軸によって分析でき、3つの軸の組み合わせによって7つの類型が存在すると述べています。3つの軸にはそれぞれ2つの極があり、「両親と子供の関係」では子供が結婚後も両親と生計を共にし、親との縦型の関係を維持するのであれば家族は権威的であり、逆に子供が結婚後に親と生計を別にするようであれば、親の権威を影響を受けにくい、自由(主義)的であるとしています。「兄弟間の関係」では遺産相続の仕方によって兄弟との関係が平等的か不平等的かを分け、「近親相姦の禁止」の強弱で家族構造が「内婚的(親戚同士のつながりが強くなる)」か「外婚的(親戚ではない外部の人間を家族に受け入れる)」に分けています。この分類によると、日本は権威主義的(不平等)家族に属します(韓国やドイツと同じ分類)。

「世界にある多様なイデオロギーの基底にあるのは家族構造」という考え方がどれだけ強固に作用するのか、本書によると少なくともマクロ的なレベル、家族構造と国の政治体制(イデオロギー)は対の関係にある(家族構造が権威主義的であれば、政治体制も権威主義的になる)としています。しかし、個人のイデオロギーが家族(家庭)ではなく、個人そのものを底とするようになってくれば、この対の関係も薄まってくるのかもしれません。また、本書では家族の構造は不変(何世紀というスパンでは家族構造は変化していない)のように扱われていますが、今後の社会でも同様であるかは分からないところではあります。そういった留意点を踏まえつつも家族における自分の役割や自分の扱われ方、影響力が、自分のアイデンティティやイデオロギーの根底にあるというのは、直観的にも説得力があり賛同できるものであると思います。