メモログ

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本:赤を見る

2004年春にハーバード大学で行われた著者の講演内容をまとめた本。「赤を見る」という行為を因数分解して、「感覚」とは何か、「知覚」とは何か、そして「意識」とは何かにまで踏み込みこんでいきます。150ページくらいの分量なのですが、内容が難解で・・ページを行ったり来たり、途中で挫折しつつ読み進めたので、読了するのに時間がかかりました。

前半の話は「赤い感覚を経験している」という行為(レッディング)を中心に進みます。赤いスクリーンは物理的には存在していて、その特徴も伝えることはできるのですが、人が赤を見たときに意識に上ってくる、赤いという感覚は物理的には存在しない。この感覚が何であるかを、説明することは非常に難しい。本書の中では、「何でも見える盲目の猿(感覚はあるが、知覚できない)」の実験を通して、感覚と知覚が別々に機能していることを説明し、進化論的なアプローチで、感覚とは外部への反応が埋没し、脳内の内部ループとなった「行為」であると論じています。

後半は、ファクターX(通常の感覚経験を現象的に豊かな意識ある感覚経験の領域まで高める付加的な特性(p47))について、意識的な「瞬間(一瞬の時間の幅)」と、その間に起る感覚の内部ループを手がかりに話を進めていきます。

前半を辛抱強く理解していければ、後半の話は感銘を覚えると思います。おすすめの良書です。