副題は「マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」。第一章はウィキノミクスの概要、第二章では既存の企業の開発がいかに難航な課題にぶちあたっているかについて、第三章から第九章まではウィキノミクスの成功事例、最後にまとめの章があります。全体で450ページ超あるので、とにかく長い。読みごたえはあります。
本書では、オープンソースによる開発など、不特定多数に開かれた開発のすごさについて、事例を中心に紹介しています。基本的には成功例の話で、その端々に集合地の危険性についても触れています。たとえば集合知による情報は、玉石混合であり「衆愚」に陥る可能性もあるという点など。たとえばオープンソース開発では、コアの機能に追加するときにはコア開発メンバーの検閲をすることで変なコードが入らないようにする、といった対応法を紹介しています。また、知的財産の保護については、オープンとクローズをうまく組み合わせるすることで、知的財産を「分散投資する」ことで、知的財産の保護と情報の共有による経済性を確保するというアイデアを紹介しています(p450)。
個人として、日本人の私として感じたことは、ウィキノミクスの柱である「グローバル化」は、英語が前提になっていること。言語の壁なんて、一切気にしていない。もちろん日本語でもオープンソース開発できるでしょうけど、コミュニティの広がりは限定的になるし、できるなら英語の方がいい。英語のコミュニティの方が数が多いし、活発だから、享受者(受信者)としても英語の方がメリットが大きい。ウィキノミクスのようなコミュニティを活かした開発が重要性を増してくるのであれば、それと同じように英語でのコミュニケーションの重要性というのがますます増してくるのかなと思いました。