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メディア・バイアス

副題は「あやしい健康情報とニセ科学」。メディア・バイアスとは「メディアによる情報の取捨選択のゆがみ(p6)」のことを指します。本書では食に関する話題を中心に「情報のゆがみ」について11章構成で各論的に書かれています。

個人的に注目したのは「量の大小を考える(p40)」という節で、警鐘を促す情報の中には摂取する「量」を無視している場合があるという話です。たとえば何百倍、何千倍の量を摂取しないと問題が起きそうにない添加物に対しても、この食品は食べたら危険と警鐘する。安全にも関わらず、危険と判断してしまう。こうした誤った認識の問題点は、食品添加物がもつメリット(保存性など)を享受しにくくさせてしまうこと。農作物における農薬も同様で、農薬に対する誤った認識が、そのメリット(収穫量の向上)を享受させにくくしてしまう。結果として、違う非効率的な方法を利用することを強制され、その非効率性が価格に反映したりして、社会全体の不利益につながる。

安全か危険かの判断は素人目には難しく、とりあえず否定してしまう方に偏りがちです。ただ、そうしたアンバランスな認識が、安価で安全な食物を否定することにつながるということを考えさせられました。本書では報道されている情報が正しいかを見極める上での基本的なアプローチ方法「科学報道を見破る十カ条」の一つとして、「量」に注目することを勧めています(p256)。

新書で250ページくらいの分量ですが、情報量は満載。それでいて平易で読みやすいので、一読されることを勧めたい本の一つです。下に章の構成を記します。

  1. 健康情報番組のウソ
  2. 黒か白かは単純すぎる
  3. フードファディズムの世界にようこそ
  4. 警鐘報道をしたがる人びと
  5. 添加物バッシングの罪
  6. 自然志向の罠
  7. 「昔はよかった」の過ち
  8. ニセ科学に騙されるな
  9. ウソつき科学者を見破れ
  10. 政治経済に翻弄される科学
  11. 科学報道を見破る十カ条

最後に本書で紹介されている国立医薬品食品衛生研究所安全情報部の主任研究員、畝山さんのブログを紹介します。