エブリシング・バブル 終わりと始まりと「エブリシング・バブル」リスクの深層を読んだ。「エブリシング・バブル 終わりと始まり」の方は、エブリシング・バブルはほぼ崩壊していて、現状で残った大きなバブルはAIバブルで、それが弾けた後は「地政学」が経済に大きな影響を及ぼす、という主旨。今後、地政学が経済にどのような影響を与えるかが中心テーマとなっている。
地政学の中でも大きいのが「米中新冷戦」と呼ばれる状況で、特に中国の経済状況について多くの紙面が割かれている。米中関係の冷え込みによって、アジアでの投資先が日本に向いているほか、インフレ圧力の一因にもなっている。また、中国についてはロシアとの失地回復に関する微妙な関係があり、地政学が利害の絡んだ複雑な様相を呈していることが示されている。アメリカと中東、南米、ロシアとの関係についても言及があり、地政学的な大局観を知ることができる。
個人的に興味深かったのは「AI時代は「人口の多さが仇になる」かもしれないという話で、AIによる自動化が単純労働を減らすことで、特定分野の労働力が余る可能性があるみたいな話。人口の多さ、特に労働人口の多さは通常「人口ボーナス」として経済成長にはプラスに作用するとされているため、人口が多いことで返ってAIで減少が見込まれる仕事の競争激化が懸念されるという視点は興味深かった。今さらながらリスキリングなど教育の重要性が増すのだろうと感じた。
「「エブリシング・バブル」リスクの深層」の方は永濱利廣さんとの対談形式で、インフレや円安といった現在の経済時事に関する内容が中心。個人的には米中立金利やプライムレートについての話が興味深かった。中立金利の観点からは1ドル120〜130円程度が目安らしいが、持続的なインフレやFRBの利下げ傾向を考慮すると、為替レートはそれより高めに落ち着きそうだなあと思った。また、ラストリゾートとしての日銀の立ち回りが世界経済に少なくない影響力を持っているのは意外ではあった。
どちらの本も分量的には多くなく、内容も比較的平易なので、YouTube感覚(?)で気軽に読める。気になる方はさっと目を通してみるのがいいかもしれない。