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映画:サラエボの花

母娘の愛というのが映画のテーマですが、その背景にある事情はかなり複雑です。その複雑さを乗り越えて、絆を強めていく母娘の姿にとても感動しました。ベルリン国際映画祭で金熊賞(グランンプリ)を受賞。

サラエボはボスニア・ヘルツェゴビナの首都で、ボスニア・ヘルツェゴビナは解体したユーゴスラビア連邦の構成共和国の一つでした。国にはボシュニャク人(ムスリム人:43%)とセルビア人(31%)、クロアチア人(17%)が共存しています。1991年にユーゴスラビアからの独立を目指し、主権国家宣言を出しましたが、少数派となるセルビア人(ユーゴスラビアの中で政治的に発言力を持つ)、クロアチア人が独立に反対。1992年3月にセルビア人のボイコットの中、住民投票によって独立を宣言しました。しかし1992年4月に民族間の紛争が激化、内戦状態になりました。紛争は1995年のディトン合意まで続き、現在は、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(ムスリム・クロアチア連邦)とスルプスカ共和国(セルビア人共和国)の連合国家となっています。

映画のキーポイントとなるのは「民族浄化」という行為。この紛争では女性への暴力行為にとどまらず、「敵の民族の女性に、自分たちの子供を産ませる」という行為が「民族浄化」という言葉の下、行われていました。男性や子供は殺され、女性は収容所に連行され、連日多くの兵士に乱暴される。そして妊娠すると強制的に出産させられる。グルバヴィッツァ地区(映画の原題でもある)は、紛争の最前線の場所で、民族浄化の名の下に多くの女性が傷つけられたのだとか。

そこでふと思うのは、いまの日本は本当に平和で自由だなということ。ありきたりなのですが、自分と他国の情勢を並べて考えたときに、まず頭に浮かんでしまう。もちろん、怖いニュースはたくさんあるし、不安は尽きないのですが、それでもボスニア・ヘルツェゴビナのような国と比べると、圧倒的に平和だし、自由を享受している(失業率は40%らしい)。

だから不満足さに耐え、禁欲的に自重して生きるべき、というつもりはないのですが、自由の結果として得たものを、世の中に還元していけるような人間になりたいなと思う次第でございます。

参考資料:wikipedia、「地図で読む世界情勢」草思社、「ボスニアの花」プログラム
*劇中の会話にでてくる「チュトニク」とは、セルビア人の不正規兵のことらしい。