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JR福知山線事故の本質

本は3章構成で1章が被害者の宮崎千通子さんの手記、2章は事故の科学的な見知による分析、3章は社会への提言といったかたち。1章の手記は事故から手術、リハビリまでの1年間について詳しく触れられています。実体験を通しているがゆえに、その場にいるかのようなリアルな描写となっています。事故の被害者を自分に置き換えて想像すると、ほんとに恐ろしすぎて何も言えません。そんなきつい経験を乗り越えて、前を向いて体の回復へと行動しているのですから、宮崎さんには深い敬意を覚えます。また、ニュースで見る事故は、1日で終わってしまいますが、現実にはずっと何年もの長い道のりであることを認識させられました。

2章では、調査資料から当時の運転状況を推察したあとに、「脱線」か「転覆」かの論拠となっている「国枝論文」についての詳述し、この事故の本質とはいったい何だったのかを論じています。筆者は、ひとつには転覆させないための対策が不十分であったこと、ひとつには科学的な分析から必ず転覆する速度(転覆限界速度)を把握していなかったことから、この事故は「科学的見知の欠如による、起るべくして起きた事故」と論じてじています。

日ごろ安全に稼働していると、気持ちがゆるみ、ミスを犯してしまうときがあります。人が動かしている以上、ミスや予期せぬ出来事はつきものであるから、人がミスをしても安全な状態を保てるか、また危険な状態になる境界線を理解しているか、そういった配慮が重要なのだと思いました。

3章は社会への提言。企業の社会的責任についてと、CSO(チーフ・サイエンス・オフィサー)の導入提案など。

平易な文面で、科学的な前提知識がなくとも話を理解することができます。たまたま手に取った本でしたが、読んでよかったと思いました。良書です。