評価:★☆☆☆☆
「2046」とは主人公のチャウが映画の中で創り上げる小説のタイトルであり、小説の世界でミステリートレインが目指す先でもあります。チャウはミステリートレインが2046に向かう途中で起きる出来事として、彼の身の回りに起きた出来事を比喩的に表現していきます。小説の中の登場人物は彼の身の周りにいる人たちだけれども、小説の中の登場人物は彼というフィルターを通して描かれているから、つまるところそれは彼自身。現実世界で起きた出来事が、「2046」という小説の世界にも反映され、書き加えられていきます。そしてチャウの中に出てきた一つの結論が、小説の結末となって表現されていきます。
ウォン・カーウァイ監督の映画を今まで一度も見たことがない人には何がなんだか分からない映画です。2046を見る前に彼の前作を見たり、他の人のレビューを読んだりして、ストーリーとそのディテールを十分に理解した上で見ないと最初の30分で映画館を出たくなること間違いなしです。初心者には極めて不親切な映画。深読みできるくらい詳しくなったら、きっと異なる評価ができるはず。そういう意味で賛否がかなり分かれる映画だと思います。
2046を見るにあたって、参考になるサイト
- J-wave Radio 2046
バックナンバーの10月4日の回と10月5日の回が参考になります。 - X-CAFE:映画「2046」
- nancix diary:香港大暴動と「2046」
- 花様年華 - goo映画
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1962年の香港。同じ日にそれぞれの配偶者と共にアパートの隣同士に引っ越して来たチャウ(トニー・レオン)とチャン(マギー・チャン)。やがて互いの妻と夫が浮気をしているらしきことを知ったふたりは、それをきっかけに惹かれあっていく…。
分別ある大人の男女の不倫の愛を官能的な映像美で描くウォン・カーウァイ監督のラブ・ストーリー。時代背景や設定など、同じカーウァイ監督作品『欲望の翼』の姉妹編的要素も多いが、それでもどこかこれまでの彼の作品群とはテイストが異なるのは、製作時期が香港の中国返還以前と以後の違いという、作家の姿勢の変化でもあるようだ。ラストにアンコールワットを出すなど、単にラブストーリーというだけでなく、世界史的な深い視野が感じられてならない。カンヌ国際映画祭ではトニー・レオンが主演男優賞を受賞。(的田也寸志)
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1960年代の香港で、ミミという恋人と同棲するヨディ(レスリー・チャン)が、サッカー・スタジアムの売店の店員スーからも想いを寄せられる。そんなスーを慰める警官ら、若者たちが紡いでいく群像劇。
ドラマチックな事件が起こるわけでもなく、淡々とした語り口から登場人物の心情を伝える展開が当時の香港映画としては斬新で、ウォン・カーワァイ監督は、この一作で世界中から注目を集めた。階段を駆け上がるカメラワークや、湿気が伝わってくるような熱帯雨林の映像に加え、時計が示す時刻の意味など思わせぶりな要素もたっぷり。映像や細部へのこだわりはもちろんだが、本作最大の収穫は、やはり香港トップ俳優たちの“旬”の魅力だろう。男なのに小悪魔的なレスリーを中心に、マギー・チャンの一途さ、アンディ・ラウの静かな包容力、そしてセクシーで奔放なカリーナ・ラウ…。この時代は良かった!と感慨もひとしお。(斉藤博昭)