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映画:いのちの食べ方

原題は「Our Daily Bread(日々の糧)」。「食料生産のグローバル・スタンダード」というあおりが印象的だったので、モンドヴィーノみたいな映画(地域色(ローカル)とグローバリゼーションの対比)なのかなと思っていたのですが、そうではなかったです。食べ物が食卓に届くまでに、どんな作業をしていて、どんな人が関わっているのか、という作業の流れを客観的にまとめていて、解説のない社会見学みたい映画でした。作り手からのメッセージがないから、見る側の考える余地が大きい。

劇中には屠殺の現場もいくぶん含まれていて、その仕事にたずさわっている人も風景のひとつみたいな存在感で登場しています。このシーンは、なかなか凄惨な描写で、ひとによっては生命の尊厳という視点から憤りを感じるかもしれません。それにくわえて、この屠殺という仕事は精神的にかなりきつそう。正直自分ではあまりやりたいとは思わない。

しかし、動物の死があるからこそ、自分の生があり、そして自分の代わりに動物の世話をして、屠殺して、食卓まで運んできてくれている人がいる。言い換えれば、自分は他に対して死と仕事を押し付けて生きているとも言えるかもしれない。そういう自分の「業」や矛盾、すべてひっくるめて、謹んで、敬意を払って食さないといけないなと感じました。