今月のHarvard Business Review(2005年8月号)に「先行者利得の真実」という記事があったので、それを基にブログについて個人的な考えを出してみようと思います。
「先行者利得の真実」を簡単に要約すると、先行者利得が生み出される条件、生み出されない条件には、「(商品に使われる)技術が進歩するスピード」と「(商品が販売される)市場が拡大するスピード」の二つが大きく影響すると述べています(右上の図を参照)。「平静型(市場スピードが遅く、技術スピードも遅い)」では、技術スピードが遅いので後発者は先行者との差別化がしにくい。後発者が新しいアイデアを出すことができても、市場スピードが遅いので後発者が飛躍的な成長をするのは難しい。
「市場主導型(市場スピードが早く、技術スピードは遅い)」は、市場が急速に拡大している上、技術的に高度ではない(技術の発展が遅い)ので、後発者が参入しやすく、先行者といえども後発者にとってかわられるかもしれない。そのため、競争優位を保つには経営資源(デザイン力、マーケティング力、ブランド)が重要になってくる。
「技術主導型(市場スピードが遅く、技術スピードが速い)」では、市場の拡大が遅い一方で技術の変化が速いため、先行してもあまり利益がでないばかりか、技術の変化が速いので後発製品の方が有利になる傾向が強い。
「激動型(市場スピードが速く、技術スピードも速い)」では、市場が急速に拡大しているため、新しい市場セグメントに対して後発者が次々と参入してくる。また、技術の変化が速いので、技術があっという間に陳腐化する。先行者の場合、既存の商品のメンテナンス・互換性も必要となる。
ブログ市場(セグメント)をどう定義するかですが、僕のイメージは右の図のような感じです。本来ならもっと細かく市場を洗い出す必要があると思いますが、あくまでイメージということで・・ ブログというのは「ウェブ制作」という市場の中の一つのセグメントであって、各セグメントは相互に補完・代替される関係にあるのだと思います。ウェブ制作(ウェブで情報発信)という目的は同じでも、それに対する手法、アプローチの仕方が異なるため、完全な競争関係にはない。まあ、今さら声を大にして言うことでもないけど、ブログがWEB制作のすべてになることはないでしょうし、SNSがブログを食いつぶすこともない・・と思います(若干の流動はあるとしても)。今はまだ一緒に相まって市場を広げている感があります。「new commer」といのは、新しい技術とかアイデアによる新しいセグメント。
で、市場がどの位置にあるかですが、わたしはWEB制作全体を含めて考えると「激動型」にあると思います。WEBサイト制作全体では過去数年で大きく様変わりしています。技術的には、HTMLからXHTML、CSS、XMLへと広がりをみせ、wikiやらSNS、フォトシェアリング、新しい手法のサイト制作(新しいセグメント)もどんどん増えてきています。最近はブラウザの対応状況と相まって高度なスクリプティングによる技術がWEBサイト制作にも広がりつつあり、これがすべてのセグメントに広く影響を与えてきています。
ただ、ブログ市場(ブログセグメント)だけを見てみると、「市場主導型」であるように見えます。ブログの技術はここ2〜3年で大きく様変わりしたとは思えません。ブログというセグメントが生まれてからまだ時間が経っていないせいもあるし、ブログ自体がシンプルな機能が特徴だからかもしれないです。なので、ブログのセグメントがひっくりかえるくらいの飛躍的な技術が生まれない限り、経営資源(デザイン力、マーケティング力、ブランド)に強みをもった先行者が有利のような気がします。はい。WEB市場全体は激しく技術変動しているので、ブログと完全に競合するような優れたツール(およびセグメント)が出現するかもしれず、結局のところどうなるかはわかりませんが(おい)。
・・まあ、こんな風に個人的な所感をあげてみました。ご意見などあればお待ちします。はい。