評価:★★★★
結局のところ映画の批評・感想というのは、見た人がその映画にどれだけ共感できるかに大きく異存すると思います。そういう意味で僕の中でこの映画の評価はかなり高いです。私自身、できるかぎり正直でありたいと思っています。私事であれ、仕事であれ。でもそうもいかない場合も多々あります。「本当にこれ良いのか?」と思うシーンはたくさんあります。
たとえば、既に完了している仕事の報告を遅らせて、次回の作業時間を多くとれるようにしたり。似合っていない服でも似合ってないとは言わないとか。とりあえずお客が来たらデフォルトで「○○はいかがでしょか〜?」とか言ってみたり。死に筋を「店長お勧め!」としてみたり・・・ 嘘は言わないにしろ、本当のことも言わない。
そのうえ、嘘やごまかしのテクニックを疑うことなく利用できる人がトップの成績を残したりもする。うまく立ち回れない人は落後していく。お客のことを本当に大事に思っている人が成功するとは限らないわけで、誠実な人間が幸せになるとは限らない。ここに経済社会・資本主義の矛盾があるのだと思います。
こうした世の中の矛盾、自分と誰かとの矛盾、嫉妬や劣等感、不公平感、いろいろな憤りを誰にぶつければ良いのだろう? この映画の場合は、その憤りの矛先が大統領に向かうわけです。
正直者はバカを見る。それはかまわない。でも、私は黙って負ける気はありません。自信というのは王者の病です。サム・ビックは王者とは無縁の存在でした。ただ、ウソのない世界を求めただけです。