2009年12月アーカイブ
2009年12月31日
本:明るい部屋
写真が本質的に有する被写体という対象から離して、「写真」という事象そのものをどのように語ることができるかを出発点に、写真とは何かを考察した本。
本書では写真を見たときに感じる情感を「ストゥディウム(一般的関心)」と「プンクトゥム(胸に刺さる何か)」の二つに分け、つかみ所がないプンクトゥムという事象について「自分の胸に突き刺さる」写真を題材に、なぜ突き刺さるのかを手探りで辿っていきます。
本の後半は亡き母の過去を辿る話を元に、過去の写真に存在する「それはかつてあった」という驚きについて話をします。この時間のギャップにある「刺さる」感覚は、一つの別のプンクトゥムであるとして、「それはかつてあった」という事実からとめどなく湧き出てくる情感、その「狂気」こそが写真のエクスタシーであると結論づけています。
結局なんだかよくわからんといった感じではありますが、著者とともに「写真とは何なのだ」と手探りでたぐり寄せていく、そうした感覚に「学び」があるなあと思いました。
2009年12月30日
本:職業としての学問
マックス・ウェーバーの「職業としての学問」を「下流社会」の三浦展さんが現代訳として意訳しています。内容としては、学問することを職業としようと考えている学生に対して、努力をしても職が得られるとは限らないし、才能の多寡によって出世が決まるとも限らない、という職業としての現実を諭していくといったもの。とにかく「安心で確実な未来などなく、答えなどない」という現実感をひたすらつきつけていきます。学問を志すにあたってどのような心構えであるべきかと言えば、ひたむきに取り組んでいくことだろうと述べている。そこから得られる「ひらめき」によって、後世に残るような業績を成し遂げることができると。しかし、だからといってひたむきな人が必ずひらめきを得られるわけではない、努力を重ねてもまったくひらめかない人もいるし、やはり運も必要であると言ってしまう。
そういった先行きの不安感も手伝って、最近の若者は「自分らしさ」と「やりがい」を結びつけて答えを求めてしまいがちだが、むやみにそれを求め、答えを急いではいけない。一生悩み、考えていけというメッセージが根底にあると個人的には思いました。「悩む力」をあわせて読みたい。
2009年12月29日
2009年12月14日
本:FREE 「無料」からお金を生み出す新戦略
「ロングテール」の著者であるクリス・アンダーソンの著書。インターネットの世界に広がっている「フリー(自由/無料)」のサービスについて、どうしてフリーのサービスがうまれるのかについての解説と、フリーのサービスにおけるビジネスモデル、生産者と消費者との間にある取引についての整理分類をしています。
フリーのサービスが生まれる理由として、「アトム(モノ)」と「ビット(情報)」の違いと「潤沢さ」に注目しています。「潤沢さ」というのは、サービスとして提供するモノが「無料にしても気にならない」ほど潤沢に存在することを意味しています。デジタルなデータ(ビット)で構成されているサービスは、有限な物質(アトム)で構成されるモノよりも、複製が容易であり、1つ生産するためのコストが0に近いため、潤沢に用意することができる。
本書では、フリーの経済モデルを、「直接的内部相互補助(無料品を呼び水にして有料品の購入を促す)」「三者間市場(広告主収入)」「フリーミアム(少数の有料ユーザーでまかなう)」「非貨幣市場(贈与経済と無償労働)」という4つに分類しています。「直接的内部相互補助」は、たとえば試供品を配ったり、1個買うと1つタダみたいな従来的なモデル。「三者間市場」はラジオやテレビといったメディアで汎用性のあるモデルで、「フリーミアム」や「非貨幣市場」は「潤沢さ」を前提にしたビット世界ならではのビジネスモデルという感じがします。1ユーザーあたりの限界費用が0に近いからこそ、幾百万の無料ユーザーをかかえることができて、そのうち5%のユーザーが有料であればビジネスとして成り立つ。コストという視点からユーザーを絞り込む必要がなくなっており、それゆえユーザーの規模が巨大で、ごく一部のユーザーが料金を支払ってくれるだけでも十分に採算があう。ロングテールの考え方に近いところを感じます。
個人的に関心を持ったのは「潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる(p130)」という点。「潤沢な情報」とは何か、「希少な情報」とは何か、その違いは何なのかいまいち判らないのですが、潤沢な情報を土台に希少な価値を生む情報を形作る、というのが自分が持っているイメージです。たとえば「私個人が今欲しいと思っている情報」なんかは、情報としての価値が高い。フリーのサービスを成功させるポイントがこのへんにあるのかなと思いました。
全体的にそんなに目新しい発見はないのですが、逆に納得感のある内容となっています。インターネット上に散見する「フリー」という現象を体系的に眺めてみたいときや、新しいサービスのアイデアを練るときに役に立つのではないかと思いました。良書です。

